第42章「ダレスの悲劇」

リナたちはブラックジャックの街にある無人ホテルを探検していた。

その薄暗いホテルの中は、まるで廃屋の様に荒れ果てていた。

ピコレ「やっぱここ、おばけがでそうでこわーい!」

ビノ「こわいでちー!こんなくらいところにとまりたくないでちー!」

リナ「私もこういう不気味なとこに来ると怖気ついちゃうから気持ちは分かる…」

アユリ「なんかここ、幽霊が出そうでおしっこがちびってしまいます…!

あ、いけない!おなごがおしっこの話するなんて…!」

ハルト「たく、てめーら臆病だぜ。幽霊ごときでビビるなんて…!」

スタン「まるでお化け屋敷みたいだ...!本当に誰もいないのか…!」

ケニー「金目のものはありそうだがうかつに取れば幽霊に呪われそうだ…

盗賊としての活躍の間はなさそうだな…!」

ジギー「それでも男カ!ユーレイなんて出てもオレがやっつけてやるゼ!」

ゴルバ「そうじゃ!幽霊なんていないぞい!」

ジギー「デモもしいたらドウスル?」

ラジン「幽霊とは死した者が死んでも死にきれず現世に居残るといわれる魂だ。

もしやこの廃屋に住んでいた者の幽霊がさまよっているのかもしれない。」

セルタ「つまりこの廃屋の主の幽霊がいるのですね?」

ラジン「多分な…もし本当に幽霊が居たらの話だが…!」

するとリナたちの前にショットガンを片手にマスクとサングラスで顔を隠し帽子をかぶった二人のマフィアの男が現れた。

そしてマフィアの片方はピザの箱を持っていた。

マフィアA「ボスの部屋はどこだったっけ…早くしねーとピザが冷めてしまうぞ…!」

マフィアB「そうだな…確かこっち…って誰だお前は!?」

スタン「ヤバい!見つかったぞ!」

リナ「ふああッ!!!

やっぱり誰かいたの!?」

ピコレ「ぴゃー!!!このひとたちこわいよー!!!」

ラジン「やはり誰かが居たか…!」

セルタ「嫌な空気とはこういうことだったのか…しかしこの怪しげな格好…どう見ても悪人にしか見えん…!」

ケニー「こいつら怪しい格好しておるぞ!銃まで抱えてまるで盗賊みたいだぞ!?」

ゴルバ「こういうもんが盗賊かいな…!?」

ハルト「こんどは銃か…だがそんなちんけな銃ではこの鎧を砕くことは出来んぞ!」

アユリ「ん、何かその箱、香ばしくて美味しそうな匂いが漂いますね。」

マフィアA「駄目だ!これはボスの為の食料だ!貴様らには渡さん!」

マフィアB「どうしても食いたいというのなら、痛い目にあうぞ!」

するとマフィアは銃をリナたちに向けた。

リナ「ふああ!!!撃たれる…!!!」

ビノ「わるいにんげんでちー!みんなまとめてやっつけてやる!

『はっぱふぶき』!!!

シュパパパパパ

ビノの放った葉っぱ吹雪はマフィアの銃をズタボロに切り裂き、

マフィアの服もズタボロにした。

マフィアA「おのれ…俺達の服が、銃が…!」

マフィアB「このままでは済まさんぞ!ボスに報告だ!」

するとマフィア達はピザの箱を落として走り去っていった。

ピコレ「やったぁさすばビノちゃん!」

リナ「たすかった…ありがとビノちゃん…!」

ビノ「でへへ。ほめられちゃったでち。」

アユリ「さて、この箱にどんな美味しいものが入ってますの…!」

あゆりがピザの箱を取ろうとすると一人の帽子をかぶった少年が自動販売機の陰から現れ、

あゆりに向かってこう叫んだ。

少年「やめろぉー!!!勝手に食うなぁー!!!」

アユリ「え、こんなところに男の子が…もしやこの箱は…!?」

少年「このピザはダレス兄さんにあげるものだ!他の奴に食べられてたまるか!」

ハルト「今度はガキか…!」

リナ「あの、この箱は…?」

少年「そうだ!このピザはダレス兄さんにあげるためにお小遣いで買ったんだ!

せっかくの差し入れを台無しにされたら困るんだ!」

アユリ「あ、そうですか。ごめんなさい…」

少年「こっちもつい怒鳴ってごめんよ…あのマフィアどもに見つからければいいが…。」

リナ「あ、男の子君、それよりあなた誰?ダレスさんって誰なの?」

少年「僕はクリス=ロバート。この街のピザ屋の隣のアパートに住んでいるんだ。

僕の将来の夢は美味しいピザ屋になることなんだ。

そしてダレス兄さんは僕をあの先ほど君たちが追い払った

あの鉄砲持った怖いマフィアから救ってくれたんだ。

だから僕はあのダレス兄さんに恩返ししたくてこのピザをダレスさんにあげたかったんだ。

でもこのピザをあのマフィアに取られかけて…でもあのマフィアどもをやっつけてくれたんだろ?

ありがとよ、お兄ちゃんお姉ちゃんたち。」

セルタ「どういたしまして。」

リナ「…あ、そういえばクリス君、ダレスさんってどこにいるの?」

クリス「あ、ちょっと待って!僕、ダレス兄さんが居るところ知ってるから僕の後をついていってくれ!

僕、あのマフィアのせいで正面に出るの苦手だからきっちりガードしてくれよ!」

リナ「うん!」スタン「おう!」ハルト「いいぜ!」ラジン「よろしく頼むよ。」

ケニー「うむ!」アユリ「お願いします!」ジギー「OK!」ピコレ「ピコレもー!」

ゴルバ「いいぞい!」セルタ「ダレスとは一体誰なのか…!」

ビノ「ボクもきになるでちー!」

こうしてリナたちはクリスの案内でダレスのいる部屋に連れて行ってもらった。

そしてクリスがホテルの地下室へ降りると地下室のドアを開いた。

そしてそこには磔にされた男が。

???「クリス…何故戻ってきた…!?それにあの痴女とあの一味は誰なんだ!?」

クリス「当り前じゃないですか!だって命の恩人なんだぞ、ダレス兄さん!」

そう、磔にされていた男はダレスだったのだ。

クリス「あとこの人たちがマフィアをやっつけてくれたんだ。

あのマフィアに奪われたピザも取り戻してくれたよ!」

ダレス「そうか、あの時はすまなかった。ではそのピザを僕の口に入れてくれ。」

クリス「あの、鉄ビキニのお姉さん、ボクまだ背が低いからダレス兄さんの口に届かないんだ。だからよろしく!」

リナ「うん、私に任せて。ほら、お口をあーんして…!」

するとリナはマフィアから取り戻したピザの箱から一切れのピザを取り出し、

そのピザをダレスの口に入れるとダレスはそのピザをむしゃむしゃ食べた。

ダレス「かたじけねえ…お前の差し入れた美味かったぞ…クリス。」

クリス「どういたしまして。背が高い人って羨ましいよね。」

アユリ「では残ったピザはあたしが…」

ビノ「ずるいでちー!ボクたちにもわけるでちー!」

ハルト「そうだ!俺にも分けてくれよ!」

ピコレ「ピコレもたべるー!ピザたべるー!」

ケニー「いや、吾輩にも食わせろ!吾輩だって腹が減っては戦ができん…!」

スタン「やれやれ、喧嘩になってしまったな…。」

セルタ「どうしよう…早くやめさせないと…!」

リナ「やめてよみんな!喧嘩してないで仲良くして!」

ゴルバ「そうじゃ、喧嘩は良くないぞい。」

ラジン「そうだ、喧嘩すると体力を無駄にする。だから争いは避けるが吉。」

5人「はい、ごめんなさい…!」

ジギー「ヤレヤレ…人間ってなんで食い物如きで争うのカ…。」

ダレス「そこの鉄ビキニの女、自己紹介はまだだったな、僕はダレス=ブライト

あのあのマフィアから先ほどのクリスとかいうガキを助けてここに幽閉されたんだ。」

クリス「ちょっと、ガキは失礼だろ!せっかく助けてあげてやろうと思ってるのに!」

ダレス「悪かった…」

リナ「私はサン・ミルド村の女戦士リナ=アップルっていうの。」

スタン「僕はウィッシュワーツの魔法使いスタン=マルフィー。」

ラジン「我はラジン=シンドゥ。インディ村から来たのだよ。」

ハルト「俺はゴーランド王国の王となる男、ハルト=ランツァートだぜ!」

ケニー「吾輩はケニー=グレハム。ビンボール村の男だ。」

アユリ「あたしは音無あゆり。ヒュウガ村から来ました。」

ジギー「オレ様はエド…ニューエドソンシティのロボットジギー13。」

ピコレ「フランおーこくのおひめさま、ピコレ=ミルクリームっていうのー!」

ゴルバ「わしはゴルバ=トロール。耳のとがったエルフの重戦士じゃよ。」

セルタ「私はセルタ=アイゼンベルグ。クロノ王国の王子だ。よろしく頼むよ。」

ビノ「ボクちゃんはビノでち。ナッツバレーにすんでいるというパフナッツでち!」

ダレス「みないい名前だ。ずいぶん遠くから来たようだが…。」

リナ「私達はヴァストローデを倒しにここまでやってきたの。

私の幼馴染のカイトくんからヴァストローデを退治してほしいって…!」

ダレス「ヴァストローデだと…!?」

スタン「なんだ、あいつヴァストローデという言葉を気にしてるみたいだぞ?」

セルタ「君は一体ヴァストローデに何か被害を受けた様だ。だから教えてくれ。」

ダレス「ヴァストローデは…俺の妹ルーシーを殺した…!」

リナ「ふええ!?妹が居たの!?」

ダレス「そうだ、彼女は…」

 

するとダレスは自分の過去について話し始めた。

それは、ダレスが10才だった頃の8年前、両親は戦争で亡くなり、

妹のルーシー=ブライトとたった二人でアルミナ村に共に暮らしていた。

ダレスは父のような軍人になるため、狙撃手(スナイパー)としての訓練を行っていた。

妹のルーシーはダレスより1才下で手先が良く効き、家事も一人前で料理が上手く、

戦争孤児であるダレスにとっては唯一の家族だった。

そしてダレスが17才に、ルーシーが16才になったとき…

ルーシー「ねえ、お兄ちゃん。今日も射的の練習するんでしょ?」

ダレス「そうだ、見ろよこの銃。新品でカッコいいだろ。」

ルーシー「うん、とってもかっこいいよ!でもこういうのは危ないってお父さんが言ってたね…。」

ダレス「うん、でもこれは凶暴なモンスターを倒す為に作られたものなんだ。

決して人を撃つためにじゃないんだ。」

ルーシー「ふーん、こういうのは悪い人に使わせちゃダメだよ。悪用されてしまうからね。」

ダレス「分かってる。絶対に誰にも譲らないさ。この銃には心の良い人にしか使えないように

悪しき者が持てば呪い殺されるという呪印を刻んだんだ。」

ルーシー「ふーん、魔法の力ってすごいよね。あたしも魔法使えるのかな?」

ダレス「では行ってくるぜ、ルーシー!元気でな!」

ルーシー「お兄ちゃんがんばってねー!一流のスナイパーになってね!」

こうしてダレスは塾へ出かけに行った。そして塾から家に帰って来ると…

ダレス「ルーシー!ただいまー!」

しかし家の様子はおかしい。いつもダレスが帰って来た時に声をかけてくれるルーシーの返事がないのだ。

ダレス「あれ、おかしいな…ルーシー、いつもここにいるはずなのに…。」

ダレスはルーシーの部屋へ様子を見に行った。

するとそこには、黒焦げになり左腕と両足を失い血まみれになったルーシーの変わり果てた姿が…!

ダレス「ルーシー!!?一体どうしたんだ!?」

ルーシー「お…にい…ちゃん…!」

ダレス「駄目だ!しゃべったら…傷口がさらに開く…!」

ルーシー「…たすけて………おにいちゃん…あたし…!」

ダレス「畜生…誰が俺の可愛いルーシーをこんな目に合わせたんだ!?」

ルーシー「お兄ちゃん…お願い...聞いてちょうだい……ヴァスト…ローデが…復活したの……!」

ダレス「ヴァストローデだと!?おふくろの言い伝えによると

ヴァストローデって数年前に世界を支配していた皇帝じゃないか!?

それにあいつはどこにいるんだ!?」

ルーシー「あたしにも…分からない…あたし以外誰もいなかった…でも…

…誰もいない…ところに…攻撃を…仕掛けられるのは…ヴァストローデだけって…

…死んだ…お母さんが…教えてくれた…ゴフッ…!」

ダレス「ルーシー!血を吐くな!今救急車を呼ぶ!そこで我慢してくれ!」

ルーシー「お…に…い…ちゃ………!」

するとダレスは電話で救急車を呼び、傷つけられたルーシーを病院まで運んだ。しかし…!

医者「残念ながら…手遅れでした…彼女はもう…!」

ダレス「そんな…ルーシー…まさか死んだんじゃねえよな…

神よ…嘘だといってくれ…!

…う、うわああああああ…!!!」

最愛の妹ルーシーの死は、ダレスにとって心の大きな重傷となった。

その日の後、お葬式が行われルーシーの遺体は村の墓場に埋められた。

そしてダレスは彼女の墓の前でこう言った。

ダレス「俺は誓った…必ずヴァストローデを倒しお前の無念を晴らすと…

そうだよな、ルーシー…!」

こうしてダレスはアルミナ村を去り、愛用のマスケット銃を持って愛用バイクに乗り、

たった一人で旅に出たのであった。

 

そして現在に至る。

ダレス「という訳だ。ルーシーが最期に言い残した言葉はヴァストローデだったんだ。

僕はあのヴァストローデを倒し妹の仇を取りたくて

故郷を去りこの街へやってきたという訳だ。しかしあのマフィアどもに捕まってしまうとは…

僕の人生の不覚だ…!」

リナ「そんな…グス…!」

ダレス「まずはここから出るのが先だ…だからこの俺を磔から外してくれ。

そこのロッカーの中にこの柵を外すためのドライバーがある。

俺のマスケット銃もここに隠されているはずだ。

幸いなことに鍵なんてないから誰でも開けられるはずだ。」

リナ「うん、ちょっと待っててね。」

ガチャッ

こうしてリナがロッカーを開くと、マイナスドライバーダレスのマスケット銃があった。

リナ「ふあ…これがダレス君のマスケット銃?」

ダレス「そうだ、僕が去年から愛用している相棒だ。

後そばにドライバーが落ちているだろう。そのドライバーでこの柵のネジを…!」

リナ「うん、待ってて。私がここから降ろしてあげるから。」

ガチャッ、ガチャッ

リナはそのドライバーでダレスの手足を張り付けた柵のネジをはずし、

ダレスは自由になった。

ダレス「ありがとうリナ、僕はやっと1週間ぶりに自由になれたよ。しかし喜ぶのはまだ早い。

このホテルにあのマフィアどものボスが居る。奴を倒したらこの街に平和が戻るはずだ。」

リナ「ふえ?この街がさびれてるのはあのマフィアたちのせいなの!?」

クリス「そうなんだ。マフィアはこの街を荒らした悪の組織なんだ。

マフィアは麻薬密売でこの街を汚染したんだ。このホテルが潰れたのも

そのマフィア達のせいなんだ。」

ケニー「麻薬密売だと…!?」ゴルバ「なんということじゃ…!?」

クリス「だからあのマフィアをぶっつぶしてこの街に平和を取り戻してほしいんだ!

保安官呼んできたんだけど麻薬密売について全然知らないせいで信用してくれなくて…!

だから非力な僕に代わってあのマフィアのボスを…やっつけてくれ!」

リナ「分かった、私達が倒してあげる!」

スタン「僕の魔法であのマフィアたちをビビらせてやるよ!」

アユリ「あたしの島には麻薬なんてありませんでした。だからあたしも参ります!」

ゴルバ「全くあのマフィアの連中め、あのマッドサイエンティストみたいな真似しおって…!」

セルタ「私の両親だって魔物にされたことがあるんだ。だから気持ちは分かる。」

ハルト「麻薬密売なんて糞野郎がすることだぜ!だから俺がマフィアなんてぶっ潰してやるぜ!」

ラジン「我らがそのマフィアとやらを裁いて進ぜよう。」

ケニー「どうやら盗賊よりも立ち悪い連中が居た様だな…だから吾輩も手伝うぞ!」

ピコレ「ピコレ、わるいやつなんてだいっきらい!だからピコレたちにまかせて!」

ビノ「ボクもわるいことするヒトなんてこらしめるでち!だからビノたちもいくでち!」

ジギー「とにかく麻薬密売する奴なんてぶっ潰してやるゼ!」

クリス「ありがとう、みんな…!」

ダレス「ではこの俺も手伝ってやる、俺も奴らに一週間もとらわれていた経験があってな、

ヴァストローデと決着付ける前に俺に恥かかせたあのバカ野郎共をぶっ潰してえんだ!

とにかくそのロッカーに隠されていたマスケット銃返してくれ。」

リナ「うん!」

こうしてリナはダレスのマスケット銃をダレスの手元に返した。

ダレス「ありがとう、リナ。

そしてクリス、お前もついていってくれ。たった一人で来たお前ひとりじゃ流石に危険だろう。」

クリス「うん、お願いだよ。ダレス兄さん。」

こうしてリナたちはダレスクリスと共にマフィアのボスと一騎打ちに行くこととなった。

はたしてこのホテルに潜むマフィアのボスとはいったい…!

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